16/3/2024 (Sat.)

昨日に続いて、今日も図書館で作業。論文の第一セクションまで終える。論述の流れが少し微妙な箇所がひとつあるが、最後まで書き終えてからもう一度検討することにした。その後は読書会の予習をして、開架されている棚を見て回る。新年度の授業の参考になりそうなものを三冊ほど借りて帰宅。今日は歩きで、それ自体は思っていたほどの距離でもなかったものの、ここ数日の目が痒いのが悪化して仕方なかった。時期的に花粉症かもしれない。

以下、借りた本。

  • 朝比奈緑『詩が語るアメリカ——多様なる声への誘い』(小鳥遊書房、2022)

以前から気になっていた本。現物を見たことがなかったので、思ったより小ぶりなサイズで驚いた。しかし、学部生が入門書として読むのを想定するとこれぐらいのサイズの方が便利だと思う。基本的に入門書は物質として薄くて持ち運びやすい方がいい。

章で扱われている作家は、ジョイ・ハージョ、エマ・ラザラス、ジェイコブ・ローレンス、ラングストン・ヒューズ、カール・サンドバーグ、ジャニス・ミリキタニ、ロバート・フロスト、ファン・フェリペ・ヘレーラ、ローレンス・ファーリンゲティボブ・ディラン、ルイーズ・グリュック。補遺として著者の授業で受講生から寄せられたコメントなども紹介されているのが魅力的だった。

来年度前期では世界文学をテーマにした授業をひとつする予定なので、その関連で。

特に外国語系の学科で文学を扱うと、原文でじっくり読むか翻訳でたくさん読むかという二択を考えがちになる。実際にはどっちにも利点があるからそれ自体は誤ったジレンマなのだが、一方の価値を強調するあまり他方を低く見積もってしまうこともよく見られる。特に翻訳を読むことへの後ろめたさを感じる人は多いようだが、本書のまえがきにはこうある。

文学作品は、原語で読まなければ本当には真の価値を理解できないのではないかと不安に思われるかもしれません。しかし、この授業を受講するみなさんには、そんな懸念は捨て去っていただきたいのです。近年盛んになっている世界文学論では、翻訳が演じる役割の重要さが強調されています。実際上、世界文学というカテゴリーは、翻訳をとおして成り立つと考えてもいいでしょう。翻訳によって国境を越え、言語の壁を通り抜けて、異なる言葉を話す人々に共有されるとき、そこに世界文学が生まれるのです。(p. 3)

ということで、学生にも翻訳文学を積極的に勧めていきたい。

  • 大出敦『クリティカル・リーディング入門——人文系のための読書レッスン』(慶應義塾大学出版会、2015)

同シリーズの別の本がひとつの授業で指定教科書になっているので、個人的な関心としてこの本も借りた。ルターの宗教改革の話題から出発し、テクストを読み込むことが革命をもたらしたというポイントを強調するイントロダクションから引き込まれる。著者がフランス文学、特にマラルメの研究者であることもあってか、詩を含む文学にもかなりの頁が割かれているのも嬉しい。